ほらり

漁師町・尾岱沼を盛り上げる!町おこし団体「尾岱沼RINC」

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約6分

東京23区の2倍以上の広さを持つ別海町、その集落の1つに住民の約9割が漁業と関係する仕事に就いている漁師町、尾岱沼(おだいとう)がある。そこに、自分たちの町は自分たちで盛り上げようと、現役漁師などの地元有志を中心に結成された2つの団体があることを知っているだろうか?

1つは2019年に設立された「尾岱沼花火実行委員会(以下「実行委員会」)」、2つ目は2020年設立の「尾岱沼RINC(リンク)」(以下「RINC」)。両団体の代表を務める藤村亮太さんに、この2つの団体の活動や結成の目的などについてお話を伺った。

藤村さんは、生まれも育ちも尾岱沼の生粋の浜っ子だ。漁師歴は今年で20年であるが「自分はまだまだ一人前になったばかり、漁師の世界ではベテランと言っていいのは30年経ってからですよ」と、少年のような笑顔で教えてくれた。

「毎年6月に野付漁港で行われていた『尾岱沼えびまつり』が土日の2日開催から日曜日のみの1日開催に短縮されてしまったことが、自分たちの中でとても残念だと感じていて、短縮された1日の代わりに自分たちで何かできないかと野付漁協青年部と尾岱沼商工会と話し合ったことが、実行委員会設立のきっかけとなりました。短縮された1日を復活させるような祭りは、諸々の事情で断念しましたが、「じゃあせめて花火をあげようよ」という話になったんです。メンバーが小さいときに見て感動した、海をバックに打ち上がる花火を子どもたちに見せてあげたいと、花火大会の開催に向けて動き出しました」

しかし、設立後すぐに世界はコロナ禍となり、人が集まることが規制されてしまい、町外から多くの見物客が訪れることが予想される大規模な花火大会の開催は不可能に近くなってしまったが、実行委員会のメンバーは諦めなかった。

「元々実行委員会のメンバーは別海の町全体を盛り上げることよりも、尾岱沼を一番に考えて何かしていきたいという気持ちで活動していたので、規制の多い中でも尾岱沼地区の子どもたちに楽しい思い出を作ってほしいという思いから、家庭用打ち上げ花火を利用した手作り花火大会を開催しました。告知活動はほぼせず、ごくごく内輪で開催しましたが、見に来てくれた子どもたちからの評判も上々で、頑張って開催してよかったと思いましたね」

終わりの見えないコロナ禍の中、実行委員会は尾岱沼を盛り上げるため花火以外の活動も行うようになっていったが、実行委員会の名前に「花火」とついていることから、尾岱沼特産の海産物販売を行っている際にも「今日は花火ないの?」とか「いつ花火打ち上げるの?」など聞かれることが多く、それならもっと活動を広く行うためにも実行委員会以外の団体を作ってはどうかという話になったそうだ。

「実行委員会の活動自体をすべて新団体に移すことも考えましたが、『尾岱沼花火』の名前を消したくなくて、花火以外の活動をする団体として、2020年にRINCを設立しました。両団体で活動しているメンバーはほぼ一緒ですね」

RINCには、野付湾から昇る朝日の“RI”SINGと野付の“N”、それに“C”ONNECTや“C”ONTACT、“C”IRCLEといった「繋ぐ・繋がる」、「輪っかになる」などの意味合いを込めている。「リンク」という読み方も綴りは違うが繋がる(LINK)との意味があり、藤村さんたちが理想とする「尾岱沼を中心に、みんなが輪になり繋がっていく未来」を象徴している。

RINCの主な活動は、尾岱沼の特産品である海産物の販売を通じて尾岱沼地区全体の良さを伝えること。藤村さん曰く「尾岱沼の良さを『知る人ぞ知る』から『みんなが知っている』にしていきたいと思って活動しています。ホタテ、ホッキ、アサリなどの海鮮がうまいのはもちろん、外洋クルーズのできる観光船や、潮干狩り、カヌーなどのアクティビティ体験ができるところやキャンプ場など。尾岱沼が1日を通して楽しめるプランを提供できるポテンシャルがある場所だと知ってもらって、それを目的に人が集まればと思っています。そうすることで、まちに活気が生まれ、衰退していくことはないし、子どもたちもこの町に住み続けたいと思えるようになると考えています」

尾岱沼の子どもたちに誇りを持ってもらえる町であり続けるために、様々なイベントを企画し、藤村さんたちは町を盛り上げている。これまでに、「道の駅おだいとう」での道の駅祭りや、野付半島のクリーンアップ事業、内海クルージング。そして、竜神太鼓を子どもたちが披露したミニ夏祭りと家庭用打ち上げ花火を利用した花火大会を同時開催した。

「これまでの活動で、イベンターや主催者の方に知り合いもできたので、RINCの活動の幅を町外にも広げていきたいですね。範囲的には尾岱沼の近隣の町である標津町や中標津町、少し足を延ばして弟子屈町などで、尾岱沼をアピールしていければと考えていますし、もちろん別海町内で開催されるイベントにも積極的に参加していきたいです。実行委員会としては、今年か来年には大きい花火を港で打ち上げられたらと考えています。水辺に打ちあがる花火って本当にきれいなので、子どもたちに見て欲しいですね。野付半島のネイチャーセンターからも見ることができるし、海を渡った国後島からもきっと見えるはずなので、同じものを見てみんながきれいだと言える、素敵で魅力的なまちにしていきたいです」

大人になってお嫁に行ったり、就職したりして町を出て辛いことがあっても、自分には尾岱沼という誇れる地元がある、いつでも帰りたいと思えるまちがあると思ってもらえる魅力の発信と活気のあるまちづくりに向け、これからも仲間と共に活動を活発にしていきたいと藤村さんは話してくれた。

自分の生まれ育った町には何もないと大人がいうと、それを見て育っている子どもたちも、「自分の町は何もなくて魅力も何もないんだ」と感じてしまうことを忘れず、自分の町を愛し、子どもたちの見本となるような、町を盛り上げていく活動を展開していく2つの団体。これからどのように動いていくのか、楽しみだ。

文:原田佳美
写真:NAGI GRAPHICS
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