ほらり

ジュニアリーダー組織「翼」

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別海町には、家庭と学校のほかに中高生たちが組織する第3の居場所がある。自分たちの興味があること、挑戦したいことを発案・企画・運営し、様々なことを体験する組織で、大人は時々アドバイスをする程度。ほぼすべてを子どもたちの主体性に任せた組織、それが「ジュニアリーダー組織『翼』」(以下、「翼」という)だ。

「ジュニアリーダー」とは何か疑問に感じる方も多いのではないだろうか。辞書を引いてみると「子ども会のお兄さんお姉さん的な立ち位置。子どもたちの自主的な活動を下支えするリーダー的な役割を担う」と書かれており、小学生などの子どもたちを補佐する活動を行う中高生組織であると解説されていた。

しかし、今回、翼に所属する高校生たちの話を聞き、この辞書に書かれているものとは違うものである印象を受けた。もちろん、子ども会などの活動に参加し、指導することも活動の一環ではあるが、この組織の中で最も大事にされていることは、中高生たち当人が楽しむことであった。

「少し前からお年寄りや子育て世代の居場所づくりへの支援は盛んに行われるようになってきました。一方で中高生への支援は、金銭的な補助が主体になっていて、活動としては隙間世代にいるのではないかという話がありました。中には学校の部活動に居場所を見つけられる子もいますが、部活に所属していない子や、そういうことに馴染めない子は、どこに自分の居場所を見つければいいのか。それならば、学校でもない家庭でもない第3の居場所を作って、自分たちの楽しいことや、やりたいことができる場所を作ろうということで、子どもたちに声をかけ、作られたのがこの組織です」

そう話してくれたのは、別海町教育委員会の酒井主事だ。町は中高生の居場所作りにスポットを当て、子どもたちが自由に発言し、様々なことを体験できる活動支援を始めている。

翼という名前は、別海町の提携都市である大阪府枚方市との交流事業「友好都市少年少女ふれあいの翼」に創設メンバーが参加していたことに由来している。

ふれあいの翼は、隔年で互いの市町を訪問し交流を行う事業で、町内在住の中学生が参加している。学校外の友達ができる貴重な事業ではあるが、従来は仲良くなっても事業後は顔を合わせることもなく、会ったとしてもどこか他人行儀になっていたそうだ。せっかく知り合えたのだから、一回きりで「はい、終わり」ではなく、「知り合えたみんなで何かできないか」という思いを持っていた子どもたち(現高校2年生)7名が中心となり、令和2年10月に翼が創設された。 

令和3年4月には新たにメンバーを募集し、事業に参加した子どもたちから組織の楽しさが段々と友達をとおして周りに広がりはじめ、現在では27名が所属する組織となった。

令和3年度最初の企画である町内在住のパティシエを講師に迎えたケーキ作り体験は、何をするか、どうやって企画を進めるのか手探り状態の中で開催されたが、参加した中高生からの評判も良く大成功を収めた。

その後は、町内飲食店や地域住民との繋がり作りを目的としたコラボレーションお弁当の販売や、メンバー間の交流を深めるために企画した季節行事のクリスマスパーティー、町内施設の利活用を目的とした肝試し大会などの自主事業のほか、公民館が開催しているイベントの手伝いを行うなど、どんどん活動の場を広げている。

その一方、メンバーが増えたことで、生じた問題もある。話し合いに参加しない者が増えてしまったのだ。その問題の解決法も高校生たち自らで見出した。組織を「パーティー」「キャリア」「スポーツ」「食」「体験・交流」の5つの部門に分け、それぞれLINEグループ内で企画の発案や意見交換をするようにしたのだ。

自分の興味のある部門に参加することができ、掛け持ちももちろんできる。自ら選んだ部門に所属することから、意見交換も活発に交わされるようになり、「部活後に翼のグループLINEの通知が絶対にある」と取材を受けてくれた高校生は教えてくれた。 

「翼に入ってよかったと思うことは、いろいろなことが体験できることです。今まで興味があってもなかなか踏み出せなかったことも、相談すると、『やってみよう』と言ってくれて、なんでも挑戦させてくれる。その分、発案だけでなく企画も自分たちでしていかないといけないので、大変なことも沢山あるけど、大人になった時に絶対役に立つ経験だと思うので、本当にやっていてよかったと思います」とN・Mさんは話してくれた。

「組織活動のいいところは、いろいろな年代の方と関わることができることです。学校の先生と話はするけどそこまで密な訳ではない。でも事業の中で関わる方とは、職業のことや、その方の人生経験などいろいろなことを質問したり話したりできるし、普段の生活では関わることのない、小学生などとも接する機会が多々あります。小さい子に対する苦手意識も関わりを持つ中でだんだんかわいいなって思えるようになり、自分の考え方も変化してきました」とK・Mさん。

「元々小さい子が好きで、将来は小学校の先生になりたいと考えています。それもあって、小学生の子たちと関わりを多く持つことのできる組織活動はすごく楽しい」とK・Aさんも話てくれた。

組織のSNS発信も担当しているH・Mさんは「もともとインドア派で、外に出て遊んだり、友達と遊んだりすることがあまりなかったけど、組織に入ってからちょっとずつ外に出る回数が増えたり、なにか事業があるときに参加してみようと思うようになってきた。SNS発信もどうすればもっと読んでいる人にわかりやすく、しっかりと思いが伝わるのかを考えながら発信することが楽しい」と話してくれた。

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「就職や進学を有利にするため、課外活動をしているという実績欲しさに組織加入している子もいるけど、どうせ参加するならしっかり自分のやりたいことを発言してほしいし、それに向けて動いてほしい」という思いも聞くことができた。「いろいろ考えることは本当にしんどくて大変だけど、その大変さも楽しい。やり遂げた後の達成感も本当にいい経験です」とみんな口々に話してくれた。

本当にやりがいを持って活動に取り組んでいることに感心した。苦しいことも仲間と協力し、学年の垣根を越え活動する翼。入ったからこそ体験できるすばらしい機会を無駄にせず、様々なことを体験して行ってほしいと思う。この経験は今しかできない事であると同時に、将来絶対に役に立つことだ。今、打ち込むものがない子どもたちに、ぜひ翼の活動を知ってもらいたいと思い、取材をさせていただいた。

翼のこれからの活動としては、別海町の新しい観光・名物の魅力を発信するイベントの作成と実施、様々な職種の方々による職業講話などがあるそうだ。

取材をしている間も意見交換が活発にあり、それをするためにはどうすればいいか、酒井主事が少しだけアドバイスをする。それを受けて高校生たちが、こうしよう、ああしようと話し合う。子どもたちの主体性を尊重し、考える力、発言することの重要性、人を動かす力や物事を実行することの大変さや、やりがいを学ぶことのできる翼の本質を垣間見ることができた。創設メンバーが高校3年生になる令和4年度、この先、どのように飛躍していくのか、楽しみである。

文:原田佳美
写真:酒井宏人(スライド写真は翼提供)
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