別海子育て応援スペースMILKIDS(みるきっず)
副代表:坂川理沙さん(Iターン|東京都出身)
スタッフ:水谷由香里さん(Iターン|大阪府出身)
2021年春、別海町の市街地に子育て応援スペース「MILKIDS(みるきっず)」(以下「みるきっず」)がオープンする。主に未就学児の子どもたちの遊び場として、ママたちの情報交換や育児相談などにも最適なアットホームな施設だ。
「当初は、出産後も仕事を続けたいという女性獣医師の声が非常に多かったことを受けて、企業内保育園のような施設を作ろうとしていました。でもあるとき、この地域で新規就農した方の多くが道外出身者で、周りに頼れる親や知り合いがおらず、あまり家から出る仕事でもないから孤立しがちだということを聞いたんです。新規就農者はママ友を作りにくい環境にあるという現状を知って、企業の枠にとらわれずに、酪農業が基幹産業のこの地域で頑張っている、より多くのママたちを応援したいと思ったのがきっかけです」
と、副代表の坂川さんはみるきっずの始まりについて話してくれた。
ママ友は貴重な情報源となる。子育てに追われるママたちは、ネット上に公開された情報1つ1つを確認する時間がないので、ママ友同士でイベントや子育て等に関する情報を共有していることが多い。ママたちが繋がる場所を作ることは、孤独や不安を解消するだけでなく、必要な情報入手の手助けにも繋がるのだ。
みるきっずの施設には、玩具や遊具、絵本はもちろんのこと、小さい子どもをもつママたちも安心して利用できるようにと、ベビーゲートが設置され、授乳・おむつ替えスペースやキッチン、冷暖房も完備されている。週2回開催される「みるきっずサロン」は、朝夕の農作業の合間に気軽に来ることができるよう予約不要で9時から15時までのオープンとし、農家のママに配慮した時間設定となっている。
また、みるきっずでは、ママパパが繋がる子育てサロン以外のサービスも行っている。
1点目は、プレイルームの貸切レンタルだ。ママたちが集まる場所は、ママ友の自宅だったり、子連れOKのお店などが定番で、どこかで気を遣ったり、長時間の滞在は気が引けたりする場合も多いことだろう。この貸切レンタルは、1時間の短時間レンタルから1日パックの長時間レンタルまで対応しており、時間や人目を気にすることなく、子どもも大人も楽しむことができる。レンタル料金も低価格で、プレオープン直後から大評判のサービスだ。施設の予約や問い合わせにはLINEを利用し、営業時間外でも、空いた時間にすぐに連絡ができるようになっている。
「目立った周知活動はしていませんが、プレオープン中にもかかわらず、地域のママたちのコミュニティを通じ、たくさんの方に知っていただき驚いています。ママたちが気軽に集まれる場所があまりなかったから、好評を得ているのかな」と坂川さん。
2点目は、別海町ファミリーサポートセンター(以下「ファミサポ」)の応援だ。
ファミサポについて聞き慣れない方もいることだろう。ファミサポは、子育ての援助を受けたい人(利用会員)と援助をしたい人(協力会員)が助け合う会員組織で、保育施設等への送迎のほか、買い物、通院等の際の子どもの一時預かりサービスなどが利用できる。料金は30分350~500円と良心的な金額であるが、原則として協力会員の自宅での預かりとなるなど、初めて利用する人にとってはハードルが高く、利用者が限られているというのが現状だ。
別海町ファミリーサポートセンター
「私も誰も知り合いがいない状態で移住してきたので、何かあったときのために預かり場所について調べたんですが、全然見つからなくて。ファミサポがあると知りましたが、子どもだけを知らない人の家に預けるのは何かと抵抗がありました。地域のママパパが気構えず気軽に、実家に行くような身近な感覚で来られる施設になればいいなと思います。」とスタッフの水谷さんは言う。
自分と同じようにファミサポ利用に踏み切れないママが多いのではないかと感じ、自らが協力会員となって、小さい子どもが安心して遊ぶことのできる安全な施設での預かりを通して、利用のハードルを下げ、ファミサポを推進することにしたのだ。みるきっずのスタッフには、有資格者(保育士・看護師)がいるところも安心ポイントだ。また、役場と連携し、協力会員の紹介にも力を入れるなど、あらゆる面から育児中のママたちを全力サポートしている。
子育て世代のママたちに求められるサービスを提供する施設「みるきっず」。ママ友パパ友を作る第一歩として、足を運んでみてはどうだろうか。
文:原田佳美写真:高橋秀明