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鈴木禎洋:移住者が近くにいるという心強さを。

プロフィール 鈴木禎洋 /26歳 / 愛知県一宮市出身 / 弟子屈町在住 / 2015年移住 / 弟子屈町地域おこし協力隊、旅人宿昭栄・管理人

広がる海より、なにもない自然が良い。

昔から山や川で遊ぶことが好きでしたし、父の影響もあってバイクやツーリングにも興味がありました。

高校卒業後に、初めてクロスバイクで大阪から東京まで行ったんですよね。あの時はお金も気持ちの余裕も無かったんで(笑)。ひたすら目的地を目指すしかできなかったんですけど、それがすごく楽しくって。知らない人や場所での出会いがとても刺激的だった。日本一周を始めたのは、バイクの中型免許を取得した大学2年の頃からです。それまでは安いバイクを買っては直し、飽きたらまた買っては直しを繰り返していたんですが、貯めたお金で「これに決めた!」って一台を買ったのがきっかけだったかな。

そのバイクで最初に行ったのが北海道です。夏休みだったし、どうせだったら涼しい場所でツーリングしたいなと思って。

帰る日は決めずに、最低限の荷物とキャンプ用具だけを持って出発。福井からフェリーに乗って、苫小牧の港に着いたのは夜8時過ぎ。辺りはなんにも無い原野。フェリーの添乗員から聞いた「信号3つ目近くのコンビニ」は、20km先。「これが北海道か…」と洗礼を受けた気分でした(笑)。

3か月くらいかけて、ほとんどの市町村を回って。後半、羅臼に着いた頃にはお金がなくなっちゃって昆布干しのアルバイトで日銭を稼いで。この頃から道東が好きになっていましたね。良い意味であまり整備されてなくて、そのまんまの自然が残っている風景がなんか自分の中でしっくりきたんですよね。旅のし甲斐があるというか。入れるかわからないような場所に、あえて入ってみるとそこが良い場所だったり。冒険心をくすぐられる感覚が良かったのかもしれません。他の県へも長期休みを利用しながら少しずつ行って。そんな中でも夏は北海道に旅の合間を縫って毎年行っていました。

四国もよかったですねぇ。うどんが本当に美味しかったし、日本の原風景のような徳島の景色はすごくキレイだったし。奄美大島は本気で移住を考えたくらい、環境が良かったです。

逆に苦手だったのは沖縄。最初は綺麗な海に感動したんですけど、すぐに飽きてしまって。山や川で育ってきたのもあって、自分にはちょっと違ったのかもしれません。ヤギ汁とかウミヘビとかの食事がどうしても会わなかったのもありますね。のちのち、食べ物に対する意識を変えるほどの衝撃的な体験でした。

移住の手段=地域おこし協力隊。

大学卒業後は輸送貨物の会社に入って営業を担当しました。仕事は自分で想像していたよりも楽しくできていたんですが、北海道への移住を考えてもいて。無茶できるのは若いうちだけだし、そもそも営業の仕事もあまり好きじゃなかったし(笑)。2年位働いて貯えもある程度できたので、やりたいことをしながら北海道で暮らす方法を考え始めたんです。

日本一周中に知り合った名古屋の友人にそのことを話すと「地域おこし協力隊をやってみたら?」と。この時始めてその制度を知ったんですが、彼自身も滋賀県で協力隊をやっているとのことだったので興味を持ったんです。

そこで、北海道での募集を見ていて、一番しっくりきたのが弟子屈町でした。良い意味でフワっとしてたんですよね。あまり形の決まり過ぎたところには行きたくなくって。

「地域貢献に係る活動」って物凄く範囲が広いから、言ってしまえばそれにつながることであれば何をやってもいいんだろうなと(笑)。

移住と狩猟とライダーハウス。

弟子屈入りしたのは2015年の10月。先に着任していた3人の協力隊と「南弟子屈町地域活性化協議会」とで、これからのビジョンについての話し合いからスタートしました。

年度終わりに決まったビジョンは「人が集まり、つどう、町の玄関口南弟子屈」。僕は「集まる」の部分としてライダーハウスの運営を主として担当することに。日本一周中にいろんなと触れ合った経験を活かしたかったんですよね。

他には、個人的に前々から興味のあった狩猟の勉強をしていました。自分で食料を確保する術を身につけるのも、これから北海道で暮らしていくんだったらチャレンジしたかったんですよね。

それに日本一周を通していろんなゲテモノやジビエ料理などを経験して「なんでも食えるんだな」という考えに至って。なんとなくお腹がすいて、自分でカエルを捕まえて揚げ物にしてしまったくらい(笑)。それでなんとなく狩猟に抵抗を感じていなかったし、突き詰めれば山菜を採るのと変わらないように感じてました。こんなこと言ったら怒られちゃうかもしれないけど(笑)。

旅人宿・昭栄。

旅館・旅行業法についての勉強や、使えそうな施設の選定など。いま思えば結構忙しくしていましたね。看板の設置や駐輪場の整備など、ハードの部分は協議会のメンバーと一緒に。自分たちでは手の出せないような大がかりな作業は、協議会メンバーの酪農家さん達の技術に助けてもらいながら整備をしました。

そして7月に開業。誰でも気軽に使えってもらいたいのと、廃校になった学校の名前を借りて「旅人宿・昭栄」と名付けました。宿泊料金は素泊まり一泊1000円。宿は教職員住宅を再活用しています。

まずは宿の存在を知ってもらおうとツイッターで宣伝活動。自分と同じように日本一周している人をたくさんフォローしていたのでその繋がりが多少あったんです。タイムラインを見て、近くに来てる人がいたら「うちの宿を使いませんか?」って連絡を取ったりして。その甲斐あってか、ポツポツと来始めて最終的に7月の利用者数は10人くらい。思ってた以上に少なくて焦りましたけどね(笑)。でも8月のお盆時期になると予約も増えて。台風の影響もあってか連泊も増えました。

ホームページを作ったり、パワーポイントで簡単なチラシを作って網走の道の駅に置きに行ったりと、弟子屈拠点でできるプロモーションは積極的にしましたね。試験的にAirbnb(エアビーアンドビー)などの民泊サイトも登録。するとJRの駅が近いのもあって、意外と海外からの旅行者需要があったんです。最終的に8月は100人ほどが利用してくれました。

流れに乗って冬季も営業。当初は夏だけのつもりだったんですけどね。流れもあったし、床や壁もきれいに張り替えたのに使わないのはもったいないなと。

灯油代もかさむので、冬は試しに1泊2000円で。これが意外と需要あったんですよ。毎月なんだかんだ30人くらい入るのでこのままやっちゃおうかなと。

 

みんなで作っていく宿。

実際に宿泊してくれる方に町を案内するとなると、そこは地元民である協議会メンバーに頼らせもらってます。弟子屈に来て3年目とはいえ、やっぱり地元の事じゃ住民には勝てませんからね。お客さんを地域のバレーボールチームに連れて行ってくれたり、地域の人の家に行って食事をしたりスノーモービルを体験させてあげてたり。宿で焼き肉をやるときに地元の食材を提供してくれたりと、実際にお客さんが町に来てからのサポートを積極的にやってくれてます。それぞれ仕事があるのでなかなか集まって打ち合わせはできませんが、連絡を取り合いながらうまく連携できているかな。

受入は僕がやって、町の案内は協議会でやって。良いバランスで昭栄を回せているかなぁと感じています。

開業にあたっての準備もそうですし、家具家電類を提供してくれる方たちもいます。宿の修繕費などは止まってくれた方々からの利益で賄えていますし。古かった家が、いろんな人のいろんな協力で形になっていくのは共同作業みたいで嬉しいですね。

廃校=弟子屈を堪能できる施設に。

これからの主な目標は、長期滞在住宅を始めること。移住を考えている人に、観光ではなく「生活する場としての弟子屈」を体験してほしいという思いからです。例えば、「冬の北海道」というのは愛知出身の僕としては、正直完全なる未知の世界でした。それを一回でも経験すれば移住のハードルはかなり下がると思うんです。ほらりさんも同じかもしれないですが、移住してきた人間が近くにいるという心強さを活かせるようにしていきたいですね。

さらに、宿だけじゃなく食事の提供や体験イベントの充実も視野に入れています。実は新しく加わった協力隊が、パン作りのスキルを活かして廃校で飲食店開業を目指してるんですよ。廃校利用の取り組みとして、こちらとも連携していたら。更に僕が採った鹿肉をいつか提供できたらもっと楽しそう。

弟子屈の滞在時間を長くして、良さをアピールするきっかけとして体験イベントを盛り込むのも考えています。狩猟を「命のツアー」とかいってパッケージ化してもいいかも。でもそれは難しいかな?(笑)。最終的には食事の提供も宿泊もできて、体験もできるという、廃校全体を使って弟子屈一帯を体験できる場所にしていきたいと思っています。

宿泊施設の仕事に携わっていると本当にいろんな人と話す機会があるので、刺激を常にもらえるのがこの仕事の良い所ですね。良い意味で、型にはまらずにいられるというか。弟子屈では手に入らないような情報や、価値観に触れることで自分の視野も広げることができると思います。それがすごく楽しいし、だからこそもっと色んな人が来る場所にしたい。それには自分が生活を楽しんでる姿がすごく重要ですよね。

自分の好きな事・興味のあることを軸にしながら、町の玄関口として「旅人宿・昭栄」をもっともっと魅力的な場所にしていきたいです。


2017年8月4日収録
インタビュー、テキスト、撮影:倉持龍太郎(提供写真は鈴木禎洋より)

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