ほらり

島川貴行・友萌:移住は「案ずるより産むが易し」です。

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別海町でお店を持つという夢を叶え、整体院を開業された島川さんご夫婦。誰かをサポートする素敵なお仕事を目指すきっかけや、町での開業、暮らしについてお話を伺いました。

——整体のお仕事をされるようになったきっかけを教えてください。

貴行さん:私は元々スポーツトレーナーになりたくて、スポーツ系の学校に進学しました。必要な時に十分なケアを受けられず、過度なトレーニングやケガが原因で競技を諦めざるを得ない方が大勢います。そういう事にならないよう選手をサポートしてあげたいと思いました。

しかし、スポーツトレーナーの仕事って本当に厳しい世界で、専属契約を取れたとしても、契約は1年単位。バイトをしないと生活できないという話も聞いていたので、一度は諦めて別の分野で就職しました。でも働いているうちに、やっぱり諦めきれない気持ちが出てきて、その延長線で整体師を志すようになりました。

島川貴行さん

友萌さん:私は3、4歳の頃から地元の別海町でマッサージ屋さんを持つことが夢でした。

私の実家は酪農家なので、両親と祖父母が一緒に仕事をしていました。仕事から疲れて帰ってきた祖父母にマッサージをするとすごく喜んでくれたんです。それがとても嬉しくて、「体が楽になるお手伝いをしたい!」と思ったのがきかっけでした。

この辺りには整体院や整骨院などが少なかったので、将来自分でお店を持って、地域の方の役に立ちたいと思い色々調べていたら、「あん摩指圧マッサージ師」という国家資格があることを知りました。それなら資格を取ろうと、母の実家のある大阪の学校に進学しました。

島川友萌さん

——大阪ではどのような活動をされていたのですか?

貴行さん:別海町で開業するための準備期間として、経営の勉強をしながら2件ほどの接骨院で勤めていました。

友萌さん:私は、卒業後1年ほど往診専門の鍼灸接骨院に勤めた後、様々な経験を積むために薬局やカフェで働きました。その間も自分の知識を深めるために接骨院で働いたり、身近な方にマッサージをしたりしていました。

——いつ開業されたのですか?

友萌さん:開院したのは2019年の7月です。その頃、店舗はまだなくて往診のみで、地区の会館などで施術をしていました。店舗を構えたのは同年の9月です。

貴行さん:当初は、しばらくゆっくりする予定でしたが、地域の方々から施術をしてほしいというお言葉をたくさん頂いて、移住後ひと月ほどで開業しましたね。

——開業にあたって苦労されたことはありますか?

貴行さん:家探しです。ちょうど当時の町内会長さんがこの辺りの地主をしていて、その方に繋いでもらって探しました。私たちは人と関わる仕事なので、なんとか情報を頂けましたが、本当に一から探すとなると大変だと思います。どこか1か所で管理してくれるところがあるといいんですけどね。

友萌さん:移住してきた人が貸家を探すのが大変なのはもちろんですが、町内の人も一から貸家を探すのは本当に大変だと思います。なかなか話が出てこないことが多いので。

——町からの補助(起業家支援事業補助金)は受けられましたか?

貴行さん:はい。対象経費の自己負担分の半分を100万円まで助成してもらえたので、本当に助かりました。そのおかげで購入したい物を購入できました。初期費用を抑えても後々買い替えるなら、最初からいいものを購入した方がいいですからね。補助金の申請手続も簡単で、購入品のリストと写真を用意して、申請書に必要事項を入力し、プリントアウトするだけでOKでした。

——北海道に移住することに不安はありませんでしたか?

貴行さん:交際当初より「最終的には別海町に戻ってきたい」という話を妻から聞いていましたし、私自身、札幌で仕事をしていたこともあるので、北海道に来ることに抵抗はありませんでした。

結婚の挨拶の時に1度町の様子を見ましたが、向こう(関西圏)の田舎に比べると、この町は市街地もまとまっているし、歩いている人には若い人もいるので不安はありませんでした。

北海道に移住するというと、友人や知人から「雪は大丈夫?」や「寒さは?」などと心配されましたが、本州の皆さんが思うほど、この辺りの雪は多くないです。家の中は暖かいし、外出時はほぼ車です。車が動かないってことも年に数回あるかないかなので、北海道に移住するなら、札幌周辺よりも道東は雪が少ないし、住みやすいと思います。

——大阪での暮らしとこちらでの暮らしに違いはありますか?

友萌さん:大阪で暮らして感じたことは、スーパーが近いことと店舗の数が多いことです。それもあって日用品の買い物は便利でした。ただ大阪は別海町と比べると自然が少ないので息苦しくなることもありました。なので定期的に緑地公園に行きリフレッシュしていました。

貴行さん:私が感じたことは、「自分で動かないといけないこと」ですね。大阪だと交通機関が豊富にあるけど、こっちは車しかないので、自分たちで運転しないとどこにも行けません。どのくらい時間がかかるか計算しておかないと、時間までに辿りつけないという点が1番の違いですかね。

買い物等に関しては、車で行ける距離にスーパーもありますし、通販を使えば欲しいものが手に入るので不便は感じません。

——別海町で暮らす上でのアドバイスを教えてください。

貴行さん:大阪に住んでいた時、隣近所にどんな人が住んでいるか知りませんでしたが、別海町だと大体わかります。近所にどんな人が住んでいて、こんな時はあの人に聞いてみたらいいとかがわかるので、相談しやすいです。

ここでは助けることもあるけど、それ以上に助けてもらうことの方が多いと思っています。なので自分で「私、しんどいです」とか「困ってます」など素直に言えるといいと思います。それを言えないと、どんどんしんどい方向に行っちゃうんじゃないかと思いますね。別海町は助けを求めれば助けてくれるところなので。

——別海町に移住しようか悩んでいる方に一言お願いします。

貴行さん:「案ずるより産むが易し」です。旅行でもいいので、1度、直接町を見ることが大切だと思います。心配していても想像できる以上の事は起きませんから、何かあった時は、その時どうするか考えればいい。自分たちも助けてもらいながら、家を見つけることができました。色々心配することもあると思いますが、まずは動いて下さい。それが一番だと私は思います。移住してから何か相談があるときは、私たちのところに来てもらっても構いません。

——今後の抱負は?

貴行さん:実は今、お店の移転を考えています。以前は、1つの部屋に施術台を2台置いていましたが、今はコロナウイルスの感染リスクを減らすため、施術室を2部屋に分けて対応していて、プライベートスペースとの区別がない状態で施術をしています。そのため酪農地帯ならではの緑に囲まれた広い土地で、より安全安心な施術スペースを確保して、私たちも、来院される患者さんにもストレスのない環境で仕事をしたいです。

取材日:2021年2月24日
インタビュー・文:原田佳美
写真:高橋秀明
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