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松舘亜以子:田舎でも「無い道は作れる」。

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松舘愛以子

プロフィール 松舘亜以子 / 33歳 / 別海町出身 / 2009年Uターン移住 / Maruca 店主

小さい頃から憧れだった「お菓子屋さん」。

生まれも育ちも別海町尾岱沼(おだいとう)です。今は尾岱沼にある自宅の敷地内に作った工房で、オーダーメイド菓子店の『Maruca』を経営しています。

お菓子づくりに興味を持ち始めたのは、小学校4年生の時です。当時、小学校に「家庭科クラブ」というものがあって、そこでお菓子づくりをして、家族に食べさせてあげたら「おいしいね!」って言ってくれて、それがすごく嬉しくて、「よし!お菓子屋さんになろう!」って思ったのが始まりです。それと、その頃母親が子どもたちに、誕生日ケーキを作ってくれていのをそばで見ていた、という理由もあるかもしれないですね。

高校時代に本格的に製菓の道を目指したくなって、進路は製菓の専門学校にしようと思いました。すると、周囲の人たちから猛反対を受けてしまったんです。「高いお金出して、たいした嫁修行にもならねぇのに!」とか「調理のほうがまだマシだ!」とかホントひどい言われようで(笑)。それで、一度は介護の道に進路変更しようかと思ったこともあったんです。でも、やっぱり製菓の道が諦めきれなくて、両親に何度も何度も説得を重ねたら、熱意が伝わったのか、それとも根負けしたのか(笑)、ようやく製菓の道に進めることになりました。

進学先は東京の『バンタン製菓学院』(現:レコールバンタン)という学校でした。バンタン製菓学院は菓子職人を養成する上で、製菓の技術はもちろん、「お菓子で個性を表現する」ことにも重きを置いていました。「美味しいのは当たり前 + 目で見て感動を与えられるお菓子作り」ですね。海外で活躍するケーキアーティストを講師に招いたり、「ここにあるフルーツで人の顔を作りなさい」なんていう面白い授業もありました。

その時に学んだことが、Marucaのキャラデコケーキに繋がっているのかもしれません。子供の頃から、私は「ナンバー1のお菓子屋」ではなく、「オンリー1のお菓子屋」になりたかったんです。そういう意味ではバンタン製菓学院は自分にぴったりの学校でした。

菓子職人として修行を積んだ、東京在住期。

バンタン製菓学院を卒業した後に、辻口博啓シェフが経営する『モンサンクレール』に就職することができました。モンサンクレールでは、「プロの菓子職人としての技術と心得」を身をもって教えられました。例えば、余ったり、ちょっとでもミスしたケーキは絶対に出さないし、ケーキの陳列や管理の方法も驚くくらいに細かくて、とにかく妥協を許さない。何から何までプロフェッショナルでした。その分、仕事は厳しかったけど、それぞれの夢を持ったスタッフたちと一緒に働いてる時間はとても刺激的だったし、勉強になりましたね。

モンサンクレールは、体調不良で止むを得ず2年くらいで辞めて、その後は友達の紹介でカフェレストランのパティシエとして働きました。そこでは、パティスリー部門の仕入れから、仕込み、メニュー考案、コースデザートの組み立てなど全てを任されていました。

その後、オーガニックショップでも働き、塩や砂糖、粉などの素材の奥深さ、また、流通の向こう側の大切さに触れることができました。

それぞれのお店で働いた経験が、今、一人でMarucaを経営する上での土台になっていると思います。

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結婚〜出産を経て別海にUターン。

カフェレストランで出会った主人と結婚し、第一子を東京で出産し、子育てをしながら、二人目を授かったタイミングで北海道移住計画を開始しました。

実は上京する前から、「いずれは別海に戻ってお菓子屋さんをやりたい!」という夢があったんです。

それ以外にも、いずれは親の老後の面倒を見るつもりでいましたし、子どもを北海道の自然の中でのびのび育てるのも一つじゃないか? と思って。東京での暮らしに後ろ髪を引かれる思いもありましたが、夫とも話し合いを重ねた上で賛成してくれたので、このタイミングしかない! と思いました。

いざ別海に帰ってきて、すぐにお菓子屋を始めたわけではありませんでした。バタバタした毎日の中でお菓子を作る余裕がなかったんです。そんな中、子どもの幼稚園のママ友から『お菓子教室やらない?』と誘って頂いて、また少しずつお菓子と向き合う時間が増えていきました。

SNSでキャラデコケーキの口コミが広がる。

お菓子教室を開催しているうちに、お母さんたちから、子供のお誕生日ケーキをお願いされるようになって、子供が喜ぶようなキャラデコケーキを作ってあげていました。するとお母さんたちがそのキャラデコケーキの写真をFacebookやInstagramにアップしてくれて、指で数えられる程度ですが、徐々に評判を頂くようになりました。その後、口コミが広がって、別海町内、中標津、はたまた羅臼町からの注文も来るようになったときに、これはお菓子屋をできるかも! と思い、Marucaを立ち上げることになったんです。

それが、いざやろうとしたら、周りの人たちに「こんな人里離れたところに建てたって誰が来ると思ってるんだ!」って反対されちゃったんです。大工さんにまで反対されて、泣いちゃったこともありました!(笑)。でも、お金の面でも自宅敷地内に建てた方が安く上がりましたし、まだ子どもたちも小さかったので、自宅敷地内で仕事ができるのは理想的でした。それに加え、町からの新規開業の補助金制度があることも知り、両親を説得し、ここに建てることができました。

当初、Marucaの営業はいろんな形を考えていました。お店の中にショーケースを置いて販売することも考えましたが、子育ての中、仕事にかけられる時間は限られているし、予算的にもキッチンだけしか作れない状態だったんです。なので、今のお店は工房のみで、オーダーメイド販売の形式でやっています。

店舗以外に、各地のイベントにもたくさん出店させてもらってます。イベンターの方々がMarucaの口コミを耳にして、お声がけくださるようになったんです。そのイベント出店がきっかけで、ケーキだけでなく、マフィンやシフォンケーキなどの焼菓子も販売できるようになりました。中でもマフィンは特に好評で、「マフィンといえばMaruca!」というイメージがついたのではないかと思います。

0305_DSC3435©DUNKSOFT / photo by Yojiro Kuroyanagi

田舎でも新たな仕事はできる!

今後はMarucaを「カフェ」にするべく、構想を練っています。夫が料理人として、私はパティシエとしてやれたらな〜と。やるならば、ただ単に「食事をする場所」としてのカフェをやるのではなくて、「たまり場」として重宝されるカフェをやりたいと思っています。

私が住んでいる地域では、両親との同居世帯が多いので、家族で毎日ワイワイガヤガヤ過ごす人が多いと思います。なので、時には自宅から離れて一人の時間を作ったり、友達と気分転換できる場所がほしいと思うことがあるんじゃないかな? と。そんな「たまり場」がちょっとそこまで……の距離にあったらうれしいと思いません?

もし作ったからといって上手くいく確証はありませんが、別海で実際に暮らしていく中で見えてきた「あれば欲しいもの」や「足りないもの」を補うことが「仕事」になるんじゃないかと思うんです。だから『この仕事は別海では無理だ!』という固定観念を外してほしい! 挑戦できるフィールドが別海にはまだまだあるはずです。

一度、別海を飛び出して「多様性」を知ること。

最近、母校に呼ばれて講演させていただく機会があるのですが、学生さんたちには「(いずれは別海に戻ってきてほしいけど)、一度は都会に出た方がいいですよ」とお話しています。

私は都会に出て、こっちでは得られない製菓の技術やデザインに触れただけではなく、都会に住む多種多様な人たちの、様々な価値観や個性が刺激になって、自分の考え方も広がったように思います。また、都会の職種の多さを知ることで、自分がやりたい仕事のバリエーションも増えると思います。要は「多様性」を知ること。

「都会にあって、田舎にないもの」は沢山あるけど、逆に「都会になくて、田舎にあるもの」も沢山あるんです。それは一度田舎を離れてみないと気づきづらい。なので、子どもたちにはどんどん都会に出てもらいたいですね。そして将来帰ってきた時に、「ないものは作って!」「あるものは魅力を活かして!」、別海をより良くしてほしいと願っています。

最近、友達から聞いて嬉しかったのが、私みたいに尾岱沼でお菓子屋さんを開くために勉強してる高校生や小学生がいるらしくて。そんな子たちに「尾岱沼でも起業して、仕事としてやっていけるという道を、最初に切り開いてみせたのは亜以子ちゃんだよね!」って言われてすごく嬉しかった。

「無い道は作れる」。

別海に戻ってきて本当によかったと感じています。子供達はのびのびと育っているし、私たち夫婦も、毎日忙しいながらも心穏やかに暮らせています。

モンサンクレールの辻口シェフは私に『無い道は作れる』という考え方を教えてくれました。こんな車の通らないところにもお菓子屋さんを作ることができたんですから、作れる「道」は別海にもまだまだたくさんあると思います。私もまだ、夢の途中です!

2016年2月24日収録
インタビュー:廣田洋一
テキスト・撮影(クレジット表記のないもの):NAGI GRAPHICS

 

 

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